図書館からの本の紹介 5月23日
2021.5.23
Soshin Jogakko
今日は各国の文化が読み取れる4冊を紹介します。
国際系を進路に考えている高校生は、新書の評論を読む前にこういったエッセイでその国の空気を感じておくとよいでしょう。
『ドイツの学校にはなぜ「部活」がないのか』
~非体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間~
高松平藏 晃洋書房
朝日新聞(2021.2.6朝刊)の書評に『教育における「自己決定」の重視。』『余暇時間が確保されたうえで、楽しみながらデモクラシーを学び、移民など社会的弱者を包括する社会運動としての意味をもつスポーツクラブ』とありました。もちろん、日本の部活から学べることはたくさんありますが、国の思想、哲学、価値観によって、子どもたちの人生が左右されることを改めて考えさせられました。
印象に残ったのは「社交機会が意図的にデザインされている」。特に「社会全体をデザイン
する=意図的に物事を計画し実行する」力は、今のコロナ禍の日本には喉から手が出るほど欲
しい力だと感じました。
どの国に生まれたとしても、幸福な人生を送れるように、社会は責任をもって子どもたちを
育てていかなければなりません。
『ワイルドサイドをほっつき歩け』~ハマータウンのおっさんたち~
ブレイディみかこ 筑摩書房
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の著者である、ブレイディみかこさんの昨年出版された一冊です。ブレイディさんの著書のテーマには「多様性」があります。ご自身がイギリスで生活される中で感じた違和感を、一つ一つ丁寧に掘り下げてアウトプットしてくれています。この本では、イギリスの時代を(日本のバブル世代や団塊世代のように)ざっくり5つにラベリングして、身近にいるおっさんたちをそのラベリングに照らし合わせて分析しています。
けれどもそこはブレイディさん、人間味あふれるおっさんたちの愛すべき生態も、ばっちり
紹介しています。だから、イギリスは魅力的で、また行ってみたくなるのです。
『《世界》がここを忘れても』 ~アフガン女性·ファルザーナの物語~
清水愛砂 寿郎社
アフガニスタン人のファルザーナは、隣国パキスタンの難民キャンプで生まれました。
ターリバーン政権が倒れ、母国に戻った一家の生活はどういったものだったのでしょうか。
白黒の淡々とした挿絵と家族の会話から、緊張した日々の暮らしが読み取れます。皆さんと同世代の少女の思いを受け止めてください。「人権や格差」を学ぼうという人は、この本から初めるといいですね。中学生にもおススメです。
『旅が好きだ!』~21人が見つけた新たな世界への扉~ 14歳の世渡り術シリーズ
角田光代·益田ミリ·清水浩史·はあちゅう·森百合子他 河出書房新社
世界をくまなく歩いている21人が、旅の魅力について語っています。この本一冊で世界旅行ができちゃう感じ。
中でも印象に残ったのは、北欧ジャーナリストの森百合子さんが「北欧デザインに興味を持つきっかけとなった」と紹介していた、フィンランドの建築家アルヴァ·アールト。春休みに世田谷美術館「アイノとアルヴァ 二人のアアルト」展を訪れたばかりだったので、彼の作品がすぐに思い出されて「私も!そう思った!」と感激しきり。
スウェーデン人がよく口にする「ラーゴム」=「ほどほど」「ちょうどよい」が、日本の「足るを知る」に通じるというくだりは、北欧が肌になじむ理由なのかとすごく納得しました。