【PTA活動】史跡めぐり
2023.11.11
Soshin Jogakko
秋晴れのさわやかな風が吹くなか、横浜市三ツ沢墓地において、「史跡めぐり」が行われました。この行事はPTAキリスト教教育研究委員会(通称キリ研委員会)主催で、捜真の礎を築いた第二代校長カンヴァース先生の墓地を訪ね、捜真を支えてくださった方々にまつわるお話を中島学院長から伺うことができる場でもあります。
「神大寺入口」バス停で下車し、10分ほど歩くとカンヴァース先生の墓所に到着します。ずっと捜真を見守りたいと願い、先生が生前に購入された墓所だそうです。高台から捜真を眺めると、お墓の数7500以上のすり鉢状の墓地に圧倒されます。
キリ研委員代表が色とりどりの花をお捧げし、一同、学院長と共にお祈りをしました。その後、創立の地である山手を離れ、今の神奈川区中丸に移ったいきさつなどを伺いました。当時捜真に通うには、現在の京急神奈川駅から歩いて通うか寄宿舎に入るかしかなく、アクセスの問題から生徒数が半分ほどになってしまったこともあるそうです。それでも、外国人宣教師たちの「この中丸の丘の上から日本にキリスト教が広まりますように」との祈りに支えられ、カンヴァース先生は移転後も捜真の発展に人生を捧げられました。「中丸の地を絶対に離れない」との思いを胸に、関東大震災や第二次世界大戦をも乗り越えてこられました。その頃先生をお支えしていたイギリス人の父と日本人の母の間に生まれたエイミー·コーンズ(のちに山田千代子)先生が、カンヴァース先生の墓所にご一緒に眠られています。日本語のコミュニケーションの面でも山田先生がカンヴァース先生を支えられたなどのエピソードから、強いきずなで結ばれていたことが伝わってきます。また、学院長は最晩年の山田先生にお会いになったことがあるそうです。
学院長のお話は、カンヴァース先生のお人柄が伝わる素敵なエピソードばかりでした。カンヴァース先生は体育を重視しており、棒を使って体を動かす「ワンズ体操」をアメリカから導入し、棒の先に視線を向けることを「棒の先にお目にかかりなさい」と仰ったこと、当時着物にエプロンが当たり前であった服装を体操がしやすいように袴に変えたられこと、墓所にある石碑には「初代校長」と彫られているが実際にはカンヴァース先生は二代目であることなど。お話のあいだも参加者からは笑顔がこぼれ、さまざまな質問が出ました。震災や空襲による火災で、戦前の捜真の公式な記録はほとんど残っていないそうですが、学院長を中心にオークションで入手したりアメリカから取り寄せたり、卒業生や卒業生の保護者からの寄贈や遺贈を受けて、ここまでの記録を集めこられたことには感動すら覚えました。
それ以外にも学院長が先輩同窓生から教えていただいた戦時中のお話や、空襲後たった一カ月で関東学院の校舎をお借りして授業を再開できたこと。「なんとしても、柱四本でも中丸の地に戻る」との坂田祐先生の信念のもと、保護者の寄付や協力で終戦三年後には新しい校舎を建てられたことまど、学院長のお話はどれも初めて耳にすることばかりでした。
その後、学院長を先頭に一同、徒歩で学校へ移動。10月半ばを過ぎたというのに汗ばむような気候の中、「まるで遠足のような楽しい」(参加者の声)ひとときとなりました。学校では「第二回聖書研究会」として、学院長による礼拝のときを持ちました。この日の聖書箇所は詩編23篇でしたが、学院長が一番お好きな部分は「死の陰の谷を行くときもわたしは災いをおそれない。あなたがわたしと共にいてくださる」という部分で、具体的に学院長ご自身の経験を交えたお話をしてくださいました。たとえ命には関わらなくとも、その人にとっては重く苦しい経験をするとき、神様がそばにいて力づけてくださるというメッセージが込められているとのお話でした。
ほかにも、卒業生で歌手の渡辺はま子さんの「あゝモンテンルパの夜は更けて」という曲のお話もありました。10月の創立記念礼拝で、この渡辺はま子さんを題材にした朗読劇の鑑賞会が行われたので、ぜひご家庭でお子さまにも話を聞いてみてください。また、第七代校長日野綾子先生がお持ちになっていた緑色の革の手帳を特別に見せていただくことができました。カンヴァース先生のお誕生日である4月18日の欄に、先生自ら書き込まれた「神を信頼し、最善の自己に忠実であれ(原文Trust in God. Be true to your best self.)」(現在は捜真のスクール·モットー)の部分を見せていただきました。礼拝とお話の後はおいしいサンドイッチをいただきながら、学年を超えた保護者同士の交流が見受けられました。
捜真を支えてくださった方々にまつわる学院長からのお話は、初めて伺う内容ばかりでした。またキリ研委員の皆さんの入念なご準備によって、心穏やかな実り多い時間を過ごすことができました。参加者からは「娘が捜真小学校出身なのだが、これまでに史跡めぐりに来たことがなく、参加してみたかった。敷居が高いかもと思っていたが、違う学年の保護者とも話せるなど和やかな会で大変楽しかった」(中1保護者)「娘が中1のときに史跡めぐりに参加し、カンヴァース先生が三ツ沢の丘から捜真を見守ってくださるとの話に感動した。このほど娘が高三になり卒業を控えるタイミングで、在学中ずっと見守ってくださったカンヴァース先生にお礼を言いたいとの思いで参加した」(高三保護者)「(創立の地である)山手にしか行ったことがなかったので三ツ沢墓地にも来られてよかった」「いつかは参加してみたいと思っていたので、ついに来ることができて本当に良かった」「ちょっとした大人の遠足のようで楽しかった」などの感想がありました。
「聖書研究会」と聞くと少し構えてしまうかもしれませんが、実際に参加してみますと『中島学院長を囲む楽しいお話し会―カンヴァース先生の墓所を訪ねて―』という会であったと感じました。まだご参加されたことのない保護者の皆様も来年はぜひ、参加してみてはいかがでしょうか。
(広報委員 中2·中1)