図書館だより 5月8日

2020.5.8

Soshin Jogakko

『神谷美恵子 島の診療記録から』神谷美恵子 

平凡社 STANDARD BOOKS

「感染症」「隔離」「差別」。今、日々の報道の中で珍しくないこの言葉。捜真生はどこかで聞いた覚えがありませんか。

5月2日の朝日新聞に「ハンセン病と40時間の移動」という記事がありました。昭和6年、現多麿全生園から瀬戸内海に開設された長島愛生園に患者を移送したときの顛末が書かれていました。

「ハンセン病の患者たちは貨物と同じ扱いで運ばれたのだ。それはあたかも、アウシュビッツに運ばれたユダヤ人たちを思い起こさせる。」

神谷美恵子さんは、昭和31年長島愛生園の精神科医として赴任されました。

この本では神谷さんが愛生園で患者と過ごす中での、迷いや思索がエッセイとして書かれています。自分を見つめる真摯な言葉は、私のすぐ隣で語られているように感じます。特に印象に残ったのは「使命感に生きる人の注意すべきことは、つねに謙虚な反省を忘れないこと。使命の内容を少し遠くへつきはなして眺めるゆとりとユーモアのセンスをもつこと。たえずあらたに道を求める祈りの姿勢であろう。」「与える側の謙虚な反省能力と思いやりと与えられる側の素直な受容がうまくかみあえば、互いが与え与えられる者となる。」「何より地球を平和な、美しいところにしたいものである。無力さに打ちひしがれるとき、山に向かって目をあげて、この願いと希望をあらたにしよう。」長い間もやもやとしていた感情がすっと整理されたように思えました。

コロナウイルスの報道の中に、医療従事者や配送業者の家族が排除されたという出来事がありました。自分は差別をしないと思っていても、当事者になれば「近寄りたくない」と思うかもしれません。日本赤十字のHPに「新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう!」が紹介されています。ぜひ検索してみて下さい。

世界中の患者さんが、一日も早く完治し、当たり前の生活を取り戻すことができるよう心から祈ります。

 

 

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