図書館から本の紹介 3月11日

2021.3.11

Soshin Jogakko

年度末が近づいてきました。春休みに向けて、冊数無制限で貸出しますので、ひと段落したら図書館にいらしてください。今回は新刊を紹介します。

『with you』濱野京子 くもん出版
以前にも紹介しました「ヤングケアラー」(18歳未満で家族のケアをしている子ども)が主人公です。
兄との比較に振り回され、中学3年生の悠人は逃げるように夜のランニングで出かけていく。そこで出会った少女朱音に心が惹かれていく。
「他人に助けを求めることは、大切なことなのよ」と悠人の母が二人に告げた言葉は、私や
あなたの背中をそっと押してくれるのではないでしょうか。「助けを求めている人がそばにいれば、手を伸ばすことも同じように大切なこと」。人と人との温もりを感じさせてくれる一冊。

『サード·プレイス』ささきあり フレーベル館
友達からの一言が、欠けたガラス片のように心に刺さる。そんな時、日常から少し離れた場所で自分を取り戻していく中高生たち。なんと生きにくい世の中になってしまったのでしょう。ほんのちょっぴり立っている場所を動いてみれば、今の自分がそのまま受け止めてもらえる。
いつもと違う場所、違う時間を過ごすことで見えてくる新しい世界。若者、老人を問わず、
~『はじめて』に出会う~時に、手を伸ばしてみよう。

 

第164回芥川賞受賞作
『推し、燃ゆ』宇佐見りん 河出書房新社

一度読み始めて、途中でストップしました。
「推しが燃えた。」最初の一行がするっと頭の中に入って来ませんでした。この言葉、いったい何だろう。しばらくして「応援しているアイドルへのコメントが、SNS上に次から次からへと燃え上がるように書き込まれていく」ということがわかりました。
私にも最近「推し」のバンドが出来て、確かに夜中の配信時間をカレンダーに書き込んで心待ちにすることがあります。あれか。「沼にはまる」。私は還暦を過ぎたれっきとしたおばあさんですが、気持ちは一緒です。もちろん年の功で、日常に差しさわりが出るようなところまで
はまりはしませんが(体力的にも難しいです)「推し」を持つ快感は想像できます。
そんな時代の一こまを切り取ったこの作品、ところどころに私にはどこか懐かしい描写が登場してきて、宇佐見さんは今までどんな本を読んできたのだろうか、と気になりました。
若い人たちは、とか言っていないで、同じ時代を共に生きている私たちなのですから、それぞれの道を認めていけたらお互いをもっと広げることができるかな、と思った一冊でした。

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