礼拝メッセージ 7月8日(水)
2020.7.8
Soshin Jogakko
「心の痛みを分かち合う」
スクールカウンセラー 平山 彩乃
【聖書】マタイによる福音書 7章12節
「人にしてもらいたいことは何でも、あなたがたも人にしなさい。これこそ律法と預言者である。」
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この聖句は、亡くなった大好きな祖父が大切にしていた聖句です。祖父は遺書に、この聖句をカードにして、自分の葬儀に来てくださった方々に配ってほしいと残しました。当時私は小学4年生だったのですが、祖父の娘である私の母は、祖父が亡くなった悲しみの中で「おじいちゃんはこの聖句の通り、自分がしてもらって嬉しいことを惜しみなく、無条件に人に行う愛情深い人だった。」と言いました。私も祖父のような人になりたいと思い、この聖句を心に刻み、祖父の聖句カードを聖書に挟み大切にしてきました。
この聖句は、私の人生の道標になりました。心理学部を求めて行ったオープンキャンパスの大学の校訓は「Do for others」でした。“Do for others what you want them to do for you”、なんと、マタイによる福音書 7章12節「人にしてもらいたいことは何でも、あなたがたも人にしなさい」でした。私は運命を感じ、この大学で心理学を学びたい、この大学に進めば道は開かれると思いました。そして捜真のスクールカウンセラーへと導かれたのです。
ルカによる福音書の「敵を愛しなさい」という表題の中にも「人にしてもらいたいと思うことを、人にもしなさい。(6章31節)」とありますが、「あなたの頬を打つものにはもう一方の頬も向けなさい」と続きます。恥ずかしながらこの部分の理解には苦しみました。
しかし、ヒントとなる出来事がありました。私が相手のことを思って一生懸命したことだったのに、相手に気持ちをないがしろにされたようなことがあり、それが悲しくて悔しくて、その相手に感情をぶつけてしまいました。それに対し、さらに「目には目を歯には歯を」のような言葉を返され、とても悲しくなりました。自分がされて嫌なことはしない、それが私の軸となっているため、衝撃的で言葉を失いました。
この時私は、相手にもう少し私の気持ちを理解してもらいたかったのだと気付きました。それなら、私はまず怒りをぶつけたことを謝り、相手の気持ちを理解すべきだと思い直しました。同時に、「あなたの頬を打つものにはもう一方の頬も向けなさい」について考えるチャンスとなりました。傷ついて、言い返したくなっても、それをしてしまったら事態は悪化します。まずは相手の言葉や気持ちを受け止め、あなたのことをもっと理解したいからあなたの痛みを私も知りたい、という姿勢で接することが「もう一方の頬も向ける」ということなのではと考えさせられました。
心理学的な側面からも考えてみました。攻撃的な言動や怒りの根底に不安や悲しみ、傷つきがあることが多いのです。そのため、攻撃的な言動を向けられて言い返したくなっても、その人にもきっと不安や悲しみ、傷ついた気持ちがあるのかもしれないと一度立ち止まり、“あなたのことを理解したいから怒りもその奥にある不安や痛みも全て受け止めたい、だから聴かせてほしい”という姿勢で向き合うことが大切だと改めて思いました。
「人にしてもらいたいことは何でも、あなたがたも人にしなさい。」が無条件の愛を与えることであるなら、「あなたの頬を打つものにはもう一方の頬も向ける」とは心の奥にある痛みを分かち合いたいという気持ち、姿勢なのではと気付き、救われました。
※注 いかなる場合でも、暴力はいけないことですので、実際に暴力を振るわれた場合は必ずSOSを出してください。