図書館から本の紹介

2021.6.23

Soshin Jogakko

『JR上野駅公園口』柳美里 河出書房新社

久々に読み応えのある作品でした。杉山先生から紹介され、読後、森川先生にも思わず紹介してしまいました。
先日、中2の生徒と一緒に寿町の炊き出しに出かけました。60年余り横浜に住んでいますが、寿町を訪れたのは初めてでした。明るく、静寂な場所であったことに少々驚きました。
小さい頃(50年以上前)、寿町は怖いところだと家族から言われていました。実際はいつも通っている横浜駅東口にも寝泊まりをしている傷痍軍人(戦争でけがをして定職につけず、駅の通路で生活していたホームレスの方)や、自宅のすぐ裏にある公園、捜真小学校から神奈川大学へ続く野原にも、ホームレスの人は生活をしていました。真冬は雪の中を裸足で食べ物を探し、地べたに座り目の前に空き缶を置いて物乞いをする人を見かけることも珍しくはありませんでした。いつの間にか、見かけなくなったこの人たちはその後どこへ行ったのでしょか。
この本には、昭和39年の東京オリンピック開催前後の日本の様子と人々の暮らしが描かれています。歴史の教科書やテレビの番組ではなかなか紹介されない当時の日本を、この小さな文庫本の中から読み取って欲しいと思います。

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